なんだかやる気が出ない日が続く。いつもよりイライラしやすい。些細なことで気持ちが沈む。
そんなとき、「メンタルの調子が悪いのかな」と感じてしまうことがあるかもしれません。 実は、その不調には「栄養が足りていない」ことが関係しているかもしれません。
セロトニンもドーパミンも、「材料」がなければ作れない
気分を安定させるセロトニン、やる気や意欲を生むドーパミン。これらの神経伝達物質は、からだの中で「合成」されています。つまり、材料が必要です。
分子栄養学(オーソモレキュラー医学)という分野では、メンタルの不調と栄養素の不足の関係が長年研究されてきました。そしてわかってきたのは、セロトニンやドーパミンを合成するためには、特定の栄養素が不可欠だということです。
セロトニンの合成に必要なもの
- トリプトファン(必須アミノ酸。食事からしか摂れない)
- ビタミンB6(合成の補因子※)
- 鉄(合成の補因子※)
- マグネシウム(合成の補因子※)
ドーパミン・ノルアドレナリンの合成に必要なもの
- チロシン(アミノ酸。フェニルアラニンからも変換される)
- 鉄(合成の補因子※)
- ビタミンB群(合成の補因子※)
※補因子…栄養素がからだの中でうまく働くために必要な、補助的な物質。
PMC(アメリカ国立医学図書館が運営する、生物医学・生命科学分野の論文データベース)に掲載された栄養療法のレビューでは、うつ病はセロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリン・GABAの不足と関連するとされ、トリプトファンやチロシンなどのアミノ酸の摂取が気分障害の改善に役立つ可能性が報告されています。
また2025年のScienceDirect(世界最大級の学術論文データベースサイト)のレビューでは、ビタミンB群・ビタミンD・鉄・マグネシウムがセロトニン合成と代謝に不可欠な補因子であることが確認されています。
簡単に言うと、タンパク質(アミノ酸)・鉄・ビタミンB群・マグネシウムが不足していると、セロトニンもドーパミンも十分に作れません。材料がなければ、工場は動かないのと同じです。
日本人女性に多い「隠れ栄養不足」
ここで問題になるのは、これらの栄養素がまさに現代の日本人女性で不足しやすいものだということです。
タンパク質の摂取量は推奨量に届いていないケースが多く、鉄の不足(隠れ貧血)は日本人女性に非常に多いとされています。ビタミンB群やマグネシウムも、加工食品中心の食事では不足しやすい栄養素です。
カロリーは足りている。お腹はいっぱい。でもセロトニンやドーパミンを作る「材料」は足りていない——これが「やる気が出ない」「イライラする」の正体かもしれません。メンタルの弱さではなく、栄養の不足。この視点を持つだけで、打ち手が変わってきます。
もうひとつ大切なこと——「吸収できるからだ」かどうか
ここで忘れてはいけないのが、「何を食べるか」と同じくらい「しっかり栄養を吸収できる状態か」が大切だということです。
腸内環境が乱れていると、いくらいいものを食べても消化・吸収の効率が落ちます。つまり、セロトニンの材料であるトリプトファンを食事から摂っても、腸がそれをうまく吸収できなければ、脳に届く量は限られてしまいます。
「腸内環境を整えること」と「必要な栄養素を摂ること」は、セットで考える必要がある。どちらか一方だけでは、十分ではありません。
- タンパク質源(卵・魚・納豆・えんどう豆など)を毎食意識して取り入れる
- 鉄・ビタミンB群・マグネシウムが不足しやすいことを知っておく
- 腸内環境を整える食生活(発酵食品・食物繊維)を並行して続ける
まずは今日の食事のどこかに、タンパク質を一品意識して加えるところから。卵ひとつ、納豆ひとパック、それだけでも十分な一歩です。完璧な食事を目指す必要はありません。「こころの安定に必要な材料を少し補充してあげる」くらいの気持ちで、始めてみてください。
メンタルの不調は「こころの弱さ」ではなく、
「からだが材料不足」のサインかもしれない。
必要な栄養を摂ること。それを吸収できる腸を整えること。
この両輪が、こころの土台を支えている。