「ストレスが溜まっているな」と感じたとき、それを気の持ちようを変えたり、リフレッシュすれば解決出来ると思っていませんか?
でも、からだの仕組みを理解すると、ストレスは「気持ち」の話だけでは片づかないものだと分かってくるのです。
今日は「ストレスがからだの中で何をしているか」を整理します。ちょっと驚く話が多いんですが、知っておくと自分の不調の原因が見えてくるかもしれません。
ストレスは免疫を落とす
ストレスを感じると、副腎からコルチゾール(ストレスホルモン)が分泌されます。短期的にはからだを守るための正常な反応です。火事場の馬鹿力、みたいなものですね。
問題は、この状態が何週間も何ヶ月も続くとき。2024年に発表された臨床研究では、コルチゾール値が慢性的に高い状態の患者で、リンパ球(免疫の要)の割合が低下し、免疫バランスの乱れが確認されています。
「最近よく風邪をひくな」「治りが遅いな」という感覚があったら、それはストレスの蓄積が免疫に影響しているサインかもしれない、ということです。風邪薬よりも、ストレスを減らす方が良い場合もあるということかもしれません。
腸と脳は話し合っている——腸脳軸の話
もうひとつ、知っておくと便利な仕組みがあります。「腸脳軸(gut-brain axis)」——腸と脳が迷走神経を通じて常にコミュニケーションしている仕組みです。
ストレスで腸内環境が乱れると、腸の中の善玉菌(ラクトバチルスなど)が減少し、炎症が起きやすくなります。するとその炎症シグナルが脳に伝わり、脳のストレス反応をさらに強める——という悪循環が生まれます。
マウスの実験では、ストレスに弱い個体ほど腸内のラクトバチルスが少なく、社会的な回避行動(ざっくり言うと「引きこもり的な行動」)が多かったという結果が出ています。ヒトのうつ病患者でも、腸内のラクトバチルスの量と抑うつスコアが逆相関するという報告があります。
「腸とメンタルが関係しているらしい」とはよく聞きますが、こうした研究を見る限り、単なる噂ではなさそうです。
そして「行動」も巻き込まれていく
ストレスの影響はメンタルとからだだけにとどまりません。私たちの「行動」にも及びます。ここが厄介なところ。
慢性的なストレス下では、コルチゾールが食欲促進ホルモン(グレリン)の分泌を増やし、満腹ホルモン(レプチン)の感度を下げるとされています。さらに、脳の報酬系のドーパミン受容体が過敏になり、高脂質・高糖質の食べ物への衝動が強まります。
ハーバード大学の研究では、ストレスを受けた被験者の脳をfMRI(脳の活動を画像で確認できる技術 )で観測したところ、報酬領域の活動が低下し、その低下を補おうとして「もっと食べたい」という衝動が増加するメカニズムが確認されています。
ストレスの負のスパイラル
ストレスが溜まる
↓
コルチゾールが過剰に分泌される
↓
免疫が落ちる・腸内環境が乱れる
↓
甘いもの・ジャンクフードに手が伸びる
↓
腸内環境がさらに悪化
↓
腸から脳にストレスシグナル
↓
メンタルの状態も悪化
ストレスが溜まると、メンタル・からだ・行動の3つの面でスパイラルが回り続けてしまいます。
こうして文字にすると「なんて恐ろしい」と思いますが、逆に言えば、このスパイラルのどこか1箇所を止めれば、わたしたちのからだ全体が改善に向かうということでもあります。腸を整えれば脳へのストレスシグナルが減る。睡眠を改善すればコルチゾールの分泌量が落ち着く。
ストレスによる負のスパイラルの仕組みがわかれば、打ち手も見えてきます。
ストレスの影響は「気持ち」だけでは終わらない。
でも、仕組みがわかれば打ち手がある。
ストレスによる負のスパイラルのどこか一箇所を止めることが、からだとこころを整える第一歩になる。